アニッシュカプーアの作品におけるスケールとその変容/ 風早小雪

版画院2年風早小雪です。
9月に発表したアニッシュカプーアについてまとめました。
当時はブログが無かったので、発表の履歴が残っておりません。
時間が経ってしまったので、少し記憶が曖昧ですが、よろしくお願いします。

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アニッシュ・カプーア

インド出身の現代彫刻家
作品はシンプルな形状の立体であるが、表面に光を反射する金属や光を吸収する染料などを用いている。


01 深い顔料の色で鑑賞者を惹き込む作品

初期は、立体の表面を顔料で覆う作品を多く制作し、次に岩盤のような床に切り込みや穴を開け、内部を顔料で覆うことにより洞窟の入口や大地の亀裂を思わせるような造形物を作るようになった。

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02 顔料を使った作品から、金属等の周りの風景を映し出す素材を作った作品へ

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シカゴの市街地 「クラウド・ゲート 」

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作品は、表面に光を反射する金属や光を吸収する染料などを用いており、非常にシンプルな形や素材から宇宙的な広がりを形成し、展示空間そのものを異空間に変換してしまう。
また、周りの風景を映し込むため、見る人、見る角度、見る時間等によって全く違う作品になる。
どこからどこまでが作品なのか、作品のスケールが曖昧になる。

03 神話世界や哲学的な考察から派生したコンセプトの作品

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テートモダン(ロンドン) 「Marsyas」

作品名でもあるマルシュアースはギリシャ神話に出てくる登場人物の名前である。
アポローンとマルシュアースは音楽で対決し、勝者は敗者を自由にしていいという条件で勝負した。
勝負に負けたマルシュアースは、プリュギアのカレーネーの洞窟で生きたまま皮剥ぎの目に遭った(傲慢の罪・ヒューブリス)。その時の血は河となりそれがマルシュアース河である。

この作品はマルシュアースの血や河(皮)を連想させる。テートモダンのスペースをふんだんに使ったスケールの大きい作品である。

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Royal Academy of Arts ロンドン「隅への射撃」 2008-2009年

ロンドンアカデミーでの個展の作品、赤いワックスで作られた車両は、ロンドンアカデミーの壁や扉をかすり、赤い跡を残しながら少しずつ移動する。巨大な大砲からは20分に一度ワックスの固まりが放たれ、そのパフォーマンスはワックス30トン分続く。
血糊のようなこれらの赤い作品は大量虐殺等を彷彿とさせる暴力的な作品。
ロンドンという場所性やイギリスによるインドの植民地支配の歴史等の関連を連想させる。

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グラン・パレ(パリ) 「Leviathan」
http://www.marthagarzon.com/contemporary_art/2011/05/monumenta-2011-leviathan-anish-kapoor/
2011年の5月から6月にかけてグラン・パレで展示されたインスタレーション作品。
リヴァイアサンは、旧約聖書に登場する海の怪物。
全てを飲み込む地獄の釜とも。この作品においては、観客は展示の順路において、作品の内側、外側を両方体験することができる。リヴァイアサンの体内と外を体感させる作品。

これらの視覚的、体験的な作品は神秘や官能といった原初的な感覚を沸き立たせている。



カプーアの作品は、初期は室内に展示できるサイズの彫刻作品が多いが、近年は空間そのものを変え、体感できるような巨大な作品が多くなってきている。


カプーアはインタビューの中でこのように話している

「建築家になるつもりはないが、彫刻にとってスケールはとても重要。スケールを通して観客は作品と対峙(たいじ)し関係を持つのです」

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110712/art11071208060004-n1.htm

カプーアの作品はどんどん拡大する傾向がある。彫刻としての作品から、作品を通して観客に「体感させること」が重要になってきているように思える。


また、授業時のディスカッションの中には、サイズを大きくしたことによって、初期の作品よりもかえって作品のスケールを小さくしているのではないか、という意見もでた。
初期の顔料を使った作品は、人を惹き込む深い色合いからブラックホールのようななんとも言えない空間の広がりを想像させる効果がある。


日本で見られるアニッシュカプーアの作品
金沢21世紀美術館
http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=5
立川のファーレ立川(安田火災ビル北側) 「山」 など


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授業のプレゼンでは、アニッシュカプーアのスケールの変容について取り上げ、自身の作品について少し触れました。
私は版画専攻で、作品制作時に、小さい試作品を作り、本番の作品の時に拡大するという手法を良くとります。
版画にかぎらず、ドローイングから絵画におこすときも、このようなことはよくされていると思います。

版画は、本来情報伝達手段(メディア)であり、多くの人に伝えるために大量に印刷することが目的とされていました。それゆえに、版画の複数性を保つためにも小さいサイズのものが、主流とされていました。
今日、テレビやインターネットなど、様々な情報伝達手段の発達により、メディアとしての版画の役割は終わり、現在は美術の一分野として扱われています。
複製芸術である版画という位置づけから現代アートとして確立させるために、タブローと同様の大きな版画を作られたり、版表現としてとらえ、立体やインスタレーションの方向に進んだり等現在版画は色んな広がりを見せています。
版画の技術や工芸的な美しさ、複数性、間接性といった版画の特性と、表現としての版画というのは私の制作のテーマでもあります。

私は今、「時間」や「記憶」をテーマに制作をしています。
それらの作品は来週からはじまる修了制作展において発表する予定です。
今回、スケールをテーマとした、幅が4mある版画作品を制作しました。
これはカプーアと同様に観客者に対して、作品を通して、作品の物質感や時間の流れを体感してもらうことを目的とし、このサイズで制作しました。

時間があったらぜひご覧下さい。

武蔵野美術大学卒業修了制作展
1/19-22 10:00-18:00 美術館展示室4

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